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研究室便り 第8号 2015年11月18日発行

すっかり秋が深まり山は紅葉が終盤になりつつあるようです.前号がいつだったか思い出せないくらいに間隔が空いてしまいました.皆さま元気にお過ごしでしょうか.

15日から丸々3日間、淡路島で文科省新学術領域「オートファジー」の班会議が開催されました.オートファジー研究会との合同開催ででこちらは第9回となります.

前半は基礎部門、後半は生理病態部門で班員の発表と若手研究者のポスター発表が行われました.会の最後には今年ガードナー国際賞を受賞したオートファジー研究の父ともいわれる大隅良典先生の授賞式の様子が紹介され、式典の入場曲が「ふるさと」であり、どこかの大学の同窓会を思い起こさせるものでした.次回以降の班会議では大隅先生のノーベル賞受賞記念祝賀会が執り行われることを関係者のだれもが心待ちにしているところです.ガードナー賞の次はノーベル賞ですから.

大隅先生は酵母を材料にオートファジーという現象(あらゆる動植物に共通する細胞の最も基本的な機能)を発見しました.酵母とヒトの間には大きな隔たりがあるという意見はありますが、その成果が今や多くのヒトの疾患と結びつき始めているのです.がん、感染、老化、免疫機能や生活習慣病と非常に幅広く、その病態との関連が証明されてきていて、ヒトが生きていくためにessentialな機能であるといえます.もちろん、私の手掛けている神経変性疾患はその代表格でもあります.

毎年のこの会議で強く感銘を受けるのは、若手研究者の生命現象を解明したいというどん欲なまでの探求心です.学部生から修士、博士課程そしてポスドクに至る20-30歳代の若手がノート片手に質問にやってきますし、ポスターでこんな発表をしているので是非とも観てアドバイスしてもらいたいと.そこで、自分もまたアイディアや情報をもらい、帰ってからの仕事に活かすことができます.彼等だけではなくもちろん教授やPIも同じ気持ちで、教科書に書いてない、誰も知らないことを知りたいと考えているのですが、これは日々の診療にもつながることです.我々が知らない病気は無数にあって、症候と検査から核心に迫るプロセスは基礎研究も診療も何ら変わりないと感じています.目の前の病気にだけ対峙していればよいのではなく、治すことができないという現状を打破するためにはどうすべきか、そんなことを少しでも頭の片隅に置いてもらえるとよいのですが.

ポスター発表には発表者自身も含めた投票があり、表彰されるチャンスがあります.副賞は淡路島だけに玉ねぎスープですが、彼らにとっては玉ねぎスープよりも、仕事を評価をされたという事実が重要で明日からの研究の大きな励みになります.多くはMDでないため、卒業すれば新しい研究室を探さなければなりません.どんな仕事をしてきたかが問われるので必死です.そんな彼らに、扱っている遺伝子の異常がヒトではこんな症状をおこすんだよと話すとものすごく喰いついてきます.マウス、ゼブラフィッシュ、線虫、酵母などからは全く想像がつかないことがヒトで起こることを知ると、本当にうれしそうに眼を輝かせます.このように基礎と臨床をつなぐトランスレーショナルな役割もまた大事であると実感します.

日々の診療に手一杯かもしれませんが、真実は教科書の中にあるだけではないこと、新しい発見の現場に自分が立ち会うことがどんなにわくわくすることであるかをわかってもらえるといいですね.最後に大隅先生の言葉です.「現象そのものを大切にして欲しいという思いと、自分の目で確かめるという姿勢を身につけて欲しいという思い、そして、自分の目で新たな現象を発見して欲しい」

次回はフグを食べたサメの話をしようと思います.

村松 一洋



研究室便り 第7号 2015年1月3日発行

南極に想いを馳せて

新年明けましておめでとうございます.
11月12月は研究室便りを更新する余裕が全くありませんでした.読んで下さっていた皆さん、お待たせしてすみませんでした.今夜は当直中ですので、題材にしようと書き留めていたネタを一つご紹介しようと思います.

昨年のNature Methods 11月号, 1242-4(Natureの姉妹誌)に載っていた野生動物観察方法に関する論文は、webのニュースにも取り上げられていたのでご存じの方もいるかもしれません.原題Rovers minimize human disturbance in research on wild animals.です.野生動物の生態をありのままに観察することは難しいことは容易に想像ができます.それならばどうしたら彼らに警戒されることなく、観察することができるのか.この問いかけにフランスをはじめとする多国籍チームが、ラジコンカーである小型ローバーを使用することで解決できるのではという、言われてみればもっともな方法を発表したのです.

このローバーがどうして有用なのかに関しては、チームは心拍数を指標に解析しました.野生の王様ペンギンに予め心拍数を記録するタグを装着しておきます.そして、このタグに接近すると、タグからの情報を受けてリアルタイムに心拍数を記録できるアンテナをローバーに搭載しました.ローバーが王様ペンギンに接近した場合と、ヒトがアンテナを持って接近した場合とで心拍数を比較すると、これが一目瞭然明らかにローバーの時は心拍数の増加が抑制され、ベースラインに早く戻るのです.ヒトの場合には、ヒトが離れていかないとベースラインに戻りません.

彼らからしてみれば、ローバーの時は見慣れないものが近づいてきたぞ、ドキドキ、なんだこれ?まあいいかとなり、ヒトの場合は違う生き物がきたぞ、ドキドキドキ、まだいるよ早くどっか行ってくれないかな、ドキドキドキといったところでしょうか.

さらにチームは皇帝ペンギンに対して、ヒナの模型をローバーに載せてみました.皇帝ペンギンはヒナを1か所に集めて、そこを成鳥が囲んで見守るといった保育所のようシステムを持っています.ここにこのローバーが接近していくと、なんとヒナが避けるのではなく声を発してきて、模型を仲間とまでに認識させることができました.非侵襲的に至近距離で生態を観察する上で非常に有用な方法であることが証明されたのです.

南極のペンギンはもともとヒトに襲われる経験がないので、ヒトは興味の対象なのですが、それでも心拍数がこれほど変動しているとは予想外でした.南極の地でヒトがペンギンに触れることは原則禁止ですが、彼らがヒトに近づいてきて、触れてきたらそれは違反ではないのです.極地研究者だけではなく、商業ツアーもあって時間さえあれば南極の地に到達することは夢ではありません.まずはアルゼンチンの南端まで行ってからなので少なくとも2週間は必要ですが、いつかペンギン達に会いに行きたいと思います.

世の中のありとあらゆる分野に研究者がいます.そんな研究しているんだ、と驚くことも珍しくありません.このチームにとっては野生動物をいかにありのままに観察するかということに命を懸けて研究しているのです.ウナギの養殖を成功させてもっと容易に安価で安心なウナギが手に入るようになるには、生態を知らなければならないのでその解明を仕事とする人もいれば、再生可能エネルギーとして水素の利用を研究する人もいるし、どんなことにもその道のプロがいます.私たちも、何か一つでよいのでその道のプロになりたいものです.

今年も無理せずのんびりと「研究室便り」を続けていくつもりです.
皆さま、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます.

村松 一洋



研究室便り 第6号 2014年10月19日発行

京都からの新幹線車内です.連日、暖かく好天に恵まれました.紅葉はまだ1か月ほど先だそうです.とはいえ、22日に時代祭、外国からの観光客も多かったり、生化学会(4000人位参加するようです)があったりで人がたくさんでした.

水曜~土曜まで開催されていた日本生化学会に、会員でもないのにお招きいただき参加してきました.担当シンポジウムは土曜だったので金曜夜着で京都入りする予定が、シンポ講演関係者で懇親会をしましょうと座長から連絡あり.それが木曜夜に行うとのこと.普段話したことない基礎の先生方と飲めるチャンスは無駄にできないと考え、1日予定を早めて京都に向かったのでした.

この懇親会は木曜日にシンポを終えた「ユビキチン・ワールド」と合同で総勢16名.ユビキチン組は自分が院生時代に膜輸送の文科省班会議などで講演を聴いていた、顔は知っている先生方(家族性PDのPINK1やってたり)がいて、完全アウェーになるかとちょっと心配でしたが安心.学会自体はまったくもってアウェーなんですけれど.

乾杯から5分ほどしてお坊さんの様な頭、しかも写真では観たことあるがでも名前がわからん関西弁の先生が登場.豪快でとにかく明るい.ガハハと笑うその先生は京大医の岩井教授とわかったのは、間もなく始まった全員の自己紹介の時.写真の印象では、頭のこともあって
(ごめんなさい)名誉教授くらいの大御所と思っていたらなんとまだ50台半ば!鉄代謝で有名なんで知っていた
のですが、ユビキチンプロテアソーム系やNF-κBなどを手掛けていて、膠原病内科医8年やってから基礎に転向した先生です.直接お話しするのはもちろん初めてです.

岩井ラボからはもう一人いらしていて、その方に言わせると岩井教授は病態に興味を持つうちに、個体(ヒト)よりも細胞レベルに関心が移っていったので、医者を辞めて研究者になったそうです.臨床がわかるから、そこに直結する視点で研究できるんですよね.鉄代謝にしても、必須の栄養素でありながら過剰となると活性酸素を産生し毒となりますから.翌日、別の会議に朝早く出るとのことでお開きになる前に中座されましたが、その帰り際の一言「あなたのやっていることは非常におもろい.だからしっかりやって~な」.自分の仕事をちゃんと把握してくれているんだと、身の引き締まる思いがしたのでした.

最近は旧帝大や東工大などでも、院生の定員が増えてしまってそれを埋めるため、学生の質が玉石混合だそうです.就活のエントリーシートに○大修士修了と書きたいだけとか普通にいるそうです.院生がいたらいたでこんな苦労もあるのですね.博士課程でも、ボスに厳しい?
鋭い?指摘を受けると、メンター役に、どうしたらよいかをすぐ聞きにくる.まず自分で考えてみて、それからアドバイスを受けにきなさいということがしょっちゅう.就活や企業セミナーで休み希望があったら、許可して下さいとは事務からの指示.事務は学生が辞めてしまっては困るとのこと.これって、基礎の世界の話だけではなく、容易に臨床に置き換えることができると思いませんか.研修医には怒ってはいけない、メンタルケアに配慮しなさいと指導医講習で言われます.また、専門外だから診れませんと丸投げする.ちょっとは自分でアセスメントしなさいと.基礎も臨床も状況は一緒ですね.基礎の先生方、皆さん口をそろえて10-20年後の日本のScienceは終わりだとおっしゃっていました.

学会に参加する醍醐味の一つが、こんな横のつながりを作る機会だと常々感じています.内輪でずっと一緒の行程もまあよいですが、せっかく立派な仕事をされている人たちと飲みながら与太話ができるなんて機会を無駄にする手はないと思います.この懇親会にも何人かのPIが院生を連れてきていいました.若い彼らにとってもこの時間はポスター会場での知識の吸収とは別の、生きかたを学ぶ機会になっていたはずです.

そろそろ、科研費の期限も近づいてきました.皆さんよろしくお願いします.

村松 一洋


研究室便り 第5号 2014年10月13日発行

「金の切れ目は研究の切れ目」

先週台風一過、すっかり晴れて私の夏休みが始まりましたが、またまた台風襲来.うまいこと飛行機も無事に着陸できました.

今月は科研費申請書の提出月となっています.毎年慣例で常勤職以上は提出が義務づけられているのですが、もちろん常勤でなくてもよいですし、大学院生も県立病院職員も申請可能ですから、資金が必要な方は是非申請していただきたいのです.と言っても申請書くのなんて決して簡単なことではありません.出しても採択率は高い種目で2割程度、低いものは1割に達すればよい方です.どうしてもこれまでの業績が多分に影響しやすいのも事実です.(唯一、萌芽研究は業績が問われません)

義務と書きましたが、これは小児科ルールということではなく、群馬大学としてのルールとなっています.大学は皆さんが科研費で得た間接経費で設備整備する側面があり(もちろんそれだけでは不十分ですが)、とにかく申請して科研費を獲得してもらう必要があります.そんな事情も大学にとっては大事なことなので、常勤職は義務なのでしょうか.この休み中に他大学の研究者とこの件を話していて、「出しゃあいいってもんじゃないよねえ」と、認識は同じでしたが...

間接経費って?という方も多いと思いますので、少し補足します.通常科研費として申請し、採択されると交付金額が決まります.この時500万円が交付されるとします.この500万円は試薬を購入したり、出張旅費に使用したり、英文校正に使用したりとある程度申請者の裁量で大学のルールの基に使用できます.出納は大学が管理しています.これが直接経費です.これに対して概ね3割程度の間接経費つまり150万円程度が大学へ支払われています.従って、文科省や学術振興会など等交付する側は計650万円程、支払っていることになります.

この間接経費は机やイスといった備品を購入したり、雨漏りを直したり、高額の機器を設置したりと設備のために使用されています.民間の助成金などは間接経費が免除となっているものもありますが、大学自身が収入を得るための役割を担うものとしてこの科研費の存在は大きいわけです.私たちが一生懸命申請書を書いて、それが通ったお蔭で大学も潤うわけですが、一応大学側も申請者側に配慮?してくれていて、間接経費の使途の一部について要望を聞いてくれます.うまくいけばハード面を整備する足しにはなるかもしれません.認めてもらえたらラッキーといったところです.

先日、科研費に関する応募説明会がありました.毎年、この機会によく採択される先生の講演があります.今年は私の出身研究室の先輩(兄弟子)の生調研佐藤教授が講師でした.ちょうど関連病院部長会議と重なり、説明会のみで中座せざるを得なかったので話の内容は聞いていません.ただ、これまで講師の方のアドバイスとして大体共通していること、それは「申請書を同僚でも先輩でも後輩でも誰でもよいから読んでもらいなさい」ということです.門外漢が読んでわかる申請書でなければまず採択は難しいです.審査委員は申請内容の専門家だけではありませんから、誰が読んでも理解できるということが大前提になります.

今年は、大学も9月に学内査読制度を実施していました.今年初めての制度ではないかと思います.前教授の森川先生は査読者となっていましたが、どの位の数の申請書を読んでいたのか後で伺ってみようと思います.

仮に採択されなくても、申請した人には敗者復活戦が学内で実施されます.配分規模は少額でも、採択率は格段に上がりますので、申請する手間をかけただけ損ということにはならないように配慮されています.こんな研究を考えているけれど、費用の目途が立たないと思っている方はもちろん、医員の先生も大学院生も挑戦してみて下さい.常勤の先生方は必須となっています.申請方法に関しては相談にのりますので、遠慮なく質問して下さい.研究者番号をお持ちでない場合は、それを申請するところから始まります.

今年は練習としていただいて、来年本気でということでもよいと思います.まずはどんなものか知るだけでも前進です.最後に、今年の説明会でも出たフレーズ「金の切れ目は研究の切れ目」だそうです.

村松 一洋


研究室便り 第4号 2014年9月21日発行

第3号から少々間が空いてしまいました.気候も大分穏やかになってと思っていたら、今日は思いのほか暑くなりましたね.希望の家では暑さを避けて夏祭りから秋祭りに変更したようですが、「今日は夏が秋を羨んだような天候ですね」とは保護者会の会長さんのご挨拶.中庭で八木節踊ったり、神輿担いだりと賑やかでした.

来年の小児神経学会でプログラム委員(教授クラスが多くて緊張するんですよ)を拝命している関係で、ある企画のコーディネーターを仰せつかりました.その企画とは「海外留学のススメ」.ということで今回は留学に関して触れたいと思います.

この学会では今年初めてこのテーマが取り上げられ、3名の演者が登壇し私は欧州経験者として「皆さん一度は国外に出てみましょう」と話ししてきました.もう一人の演者は同期にあたる名大のK先生、私のドイツ滞在と同時期にワシントン州で過ごし新生児神経学の日本の新しいリーダーとなりつつあります.また英国米国の両方を経験したT先生はそのことを生かして発達障害の療育に取り組んでいらっしゃいます.

3名の共通点は集約すると、たくさんの苦労があったけれどそれを上回る楽しさと収穫があったということでした.3名がそれぞれ時間一杯使ってしまったので議論の時間がなく、それが心残りでもありました.それで来年もこの企画を続けましょうとプログラム委員会でリクエストしていて、めでたくその企画が通ったわけです.来年は留学Q&A的な討論時間を設定して、留学へのモチベーションアップと不安解消に役立つようなセッションにしようと考えています.

ネットで他科の学会プログラムを眺めてみたら、結構取り上げられているんですね.小循然り、透析学会、精神科やら成人診療科では留学は普通のことぐらいにハードルが低いのではと思っていましたが、希望者減少はどこも同じ悩みなのかもしれません.精神科は若手の会なるものを作って、学会を挙げて支援しています.海に囲まれている日本だからこそ、固定観念を覆すために他民族異文化交流は必要で、外から眺めてやっと自国を正しく理解できるようになるのだと思います.

心配は尽きないことも理解できます.行き先、家族、言語、診療技術、お金等々気になることはたくさんあるでしょう.それを解決することもまた留学の一部です.大体は努力で何とかできます.運も少し必要かもしれません.お金がなければ借金すれば済むことです.帰国してから十分返済できます.音楽や絵が好きな方は欧州なんて一石二鳥です(三鳥以上?).運転が好きなら北米でドライブもいいでしょう.広くてどこまで行っても米国ですし.イスラエル人は「3時間走ると国境なんだ」と嘆いていました.学会で特別講演に呼ばれるような著名人も欧米ではすぐそばにいたりします.まあまずは身近にいる経験者にお尋ねください.

そんなわけで、先日配布された国内外留学希望調査をもう一度眺めてみて下さいね.

村松 一洋



研究室便り 第3号 2014年8月24日発行

この夏もとても暑いですね.こうなるとビールが美味しく飲めるわけで、ビアガーデンに行った方も多いでしょう.ビアガーデンに着いて席に座ります.ウェイターさんに「とりあえずビール」と頼んでしばし待ちます.しばらくするとビールが運ばれてきて、喉を潤すことができます.もし、ビールを注文した時に既によく冷えたジョッキを持ってきてくれていたら、予期しない結果でうれしいですよね.この時にはドパミンが脳内でたくさん分泌されます.

私達、ヒトは注文をするとビールが届くことがわかっているので、実は注文の時点で、ビールを期待しているのでドパミンが分泌されます.ビールが来たときにもドパミンは分泌されますが注文時よりも少なくなります.もし、先のように注文の時点でビールが届いたら、それはもうドパミン分泌量は注文だけの時より増加します.もし、注文してしばらくして、「今日はビールが終わってしまいました」と言われたら、がっくりですね.定常量よりもドパミンは低下します.

これをサルでやると、サルは注文したらビール(ジュース)が来るなんて本来は知りませんから、注文時にはドパミンは出ません.ところがこれを繰り返すうちに学習して、注文するとヒトと同じようにビール(ジュース)を期待してドパミンが出るようになります.いじわるされて、ビール(ジュース)が来ないとドパミンはかえって低下します.ドパミンは「報酬予見」の程度により分泌量が規定されます.しかも、その量は数式で表すことができるのです.

ということで今日はドパミンの話題でした.なぜ、こんな話をしたかというと、この週末に第29回の大脳基底核研究会が青森で開催されました.また、随分と縁のない話だとお感じになりますか?この研究会の発起人で第1回の会長は皆さんご存知ないかもしれません.群馬大学脳神経外科の大江千廣教授なのです.国際生理学会のサテライトとして立ち上げられ、第1回は草津で開催されました.その後も、神経生理、脳神経外科、神経内科、小児科の先生達が参加して脈々と続いているのがこの会です.大江教授はその後、水上で開催したり、国際大脳基底核研究会を合同で開かれたりとこの領域の発展に努められていました.

内容は基礎医学だけではありません.パーキンソンはもちろん基底核疾患としてジストニアも対象疾患です.基礎から臨床まで広く話題として取り上げるのが、この会のよいところです.今回は、疫学調査で演奏家のジストニアが多いという発表もありました.プロの演奏家には死活問題ですが、演奏歴が長いほど発症しやすい傾向があります.その要因はまだわかりません.DBS(脳深部刺激療法)を受けている、おそらく皆さんも知っているであろう演奏家も少なくないですし、超売れっ子漫画家も治療を受けたそうです.

先のドパミンは血圧上昇が主作用ではありません.私たちが何かをしようというモチベーションを保つためにも、無意識のうちにドパミンが分泌されています.これがあるから、行動する意欲が出るのです.ドパミンが低下するとどうなりますか?そう、パーキンソン病です.無欲状顔貌、無動、うつ...パーキンソン病も他人ごとではありません.普段診療している時には出会うことはめったにないですが、これから皆さんが発症する可能性もないとはいえないのです.

土曜日は夕食時の懇親会の後、23時までナイトセッションで演題発表が続きました.座長も顔が赤いです.昔は0時前に終わることがなかったようです.お酒が入って、弁舌も滑らかになるのでしょう.議論がつきないようです.とても楽しく勉強になりました.今年は青森ということで、田酒の一升瓶が23本も並びました.津軽三味線の奏者も盛り上げてくれました.昼間のセッションのホールは"ねぶたの家"という公共観光施設のため、発表の際中に2時間おきくらいにねぶたのお囃子が響き渡ります.来年は30回記念で京大霊長類研の高田教授が下呂温泉を予定しているらしいですよ.

村松 一洋



研究室便り 第2号 2014年8月10日発行

創刊号にコメント下さった先生方、ありがとうございました.
森川先生のお話は風化してしまわないよう代々語り継いでいくためにも時々、お願いできればと思います.

さて、英語について柴先生が述べたように、英語は研究する上では切り離せない重要なツールであることは確かです.論文を書くだけなら、読む・書くができれば当座はしのげます.しかしそれで満足してよいかというと、本当のところはダメなのでしょうね.あくまで最初の目標が読む・書くであり、いずれは聞く・話す能力を伴いたいものです.メールや文書でのやり取りだけならよいのですが、学会でのFace to faceの質疑応答だけではなく、最近はネット回線を利用したテレビ会議が導入されつつあるので、やはり直接の会話能力が必要と痛感する今日この頃です.

学内には英会話に通ったり、移動の車中でCDを聴いたりして習得しようと努力している先生方も増えてきました.手っ取り早いのは、現地に滞在して24時間365日英語の環境に身を置くことでしょうが、誰もができることではありません.種々の取り組みで英語が苦にならなくなるだけでも、仕事の幅が拡がり、読む・書く意欲が湧いてくると思います.後は、自動翻訳に頼るという手もありますし、ライフサイエンス辞書を使えば、専門用語や共起表現が瞬時にわかります.Google Scholarも同様に使えます.

日本語の英訳を企業に頼むとまあそれなりの料金がかかります.自動翻訳でも自力でもとにかく英語になっていれば、質の高い英文校正に出して直してもらえばよくて、英訳程にはお金がかかりません.慣れてしまえば日本語→英語という順序ではなく、直接英語で書けるようになりますが、はじめのうちは日本語を直すのでよいと思います.大きな声では言えませんが、英文校正は医会で賄っていまますし、和文英訳も考えてもよいのかもしれませんね.とある大学の小児科では医会員に、自動翻訳のめちゃくちゃな英語でもよいから原稿を持ってくれば、校正に出してやると発破をかけて、論文を書かせているそうです.

自分も英語がもっとできるようにならないと、と常日頃考えているわけですが、そういえば関東の超人気臨床研修指定病院の集中治療科ではレジデント・スタッフ募集に際し、英文を読むことに抵抗のある人は遠慮すべし、新しい知識、正しい知識を得るためには膨大な英語論文を、さらにそれを批判的視点で読みこなすことに耐え得る人材を募集すると、かなりの強気で公募していました.大規模臨床試験の結果は英文誌に載りますからね.これまで集中治療科がなかったところに新たに立ち上げることになり、この集中治療科に部長として招かれたのは私の同級生でした.ちゃんと他科と協調できているかな(笑).

今回は英語に焦点を当ててみました.

最後に宣伝です.
9月13日は同窓会です.今年度から同窓会企画特別セミナーを開催します.対象は主に卒後10年目くらいまでの若手(もちろん年齢制限はありません)で、通常行われる専門医必修セミナーに準じています.多くの人に同窓会に参加してもらいたいとの想いから、この企画が行われることになりました.今年の講師は島根大学臨床研修センター副センター長で地域医療教育研修センター長の鬼形和道先生です.もちろん群馬大学小児科のOBです.かつてベストティーチャー賞を獲るなど、若者の心をひきつけるのが得意な先生でした.聴いて損はないと思いますので、迷っている方はもちろん欠席しようかなと思っている方もご一考いただけるとうれしいです.

村松 一洋



研究室便り 創刊 2014年7月21日発行

研究室の様子を知ってもらいたくて、ずっと書こうと思いながら早、半年が過ぎてしまいました.年1回の同窓会誌だけでは宣伝不足なので、ここに意を決して始めてしまおうと思います.
私が敬愛する(かつ飲み友達の)島田療育センターはちおうじの小沢浩所長は、今週の一言を毎日曜日に知り合いの全国の先生達に配信しています.忙しくて時間もないだろうに、でもずっと続けられています.涙を誘う内容が多くて(魂を揺さぶるので)、楽しみです.それにも感化されていたのです.

内容はその時の気分で雑多なことを書いていきますので、時間があればお付き合いください.反響などあればうれしいですが、それを期待すると継続する気が失せると昔K先生がおっしゃっていたことを想いだして期待しないことにします.

研究、研究しろと言われても何をどうしたらよいかわからないし、そもそもそんなことしたくないし、研究を勉強に置き換えるとなんだか小学生みたいです.勉強の仕方をわからない人はこれを読んでいる人にはいなかったかもしれませんが、勉強したくなかった人はたくさんいたはずです.

研究の動機って、日常診療の疑問からも湧き出てくると思っていました.ところが数日で治って帰っていく患者ばかりだとインパクトに欠けてあまりその気にならないのかも.本当はそこにも十分に種はあるのですが気づきにくい.ここにヒントがあるのではないかと.

なんだかさっぱりわからない病気とか、診断がつかない病気とか、診断したけど治らない病気とかそんなのばかり診ていると毎日??ばかりだし良くならないし悔しいわけです.何とか解決できないものかと思うわけです.

23週のELBWの絶対に脳出血を起こさない管理とか、重症仮死を後遺症なく普通学級で対等にやれる小学生にしたくないですか.もっと突っ込んでいえばそれを考え出してみたくないですか.動機ってそんなところから湧いてくるものだと思います.できるできないは別にして.

さて、次回に続きます.


村松 一洋


先週、福山幸夫先生(女子医大名誉教授)が天に召されました.福山型筋ジストロフィーを世界に提唱し、小児神経学の礎を築き国際化に心を砕いていらした先生です.数年前まで、前橋のいまいずみ小児科に定期で来てくださり、難治てんかん症例の相談にのっていただいていました.群馬のことをいつも気にかけ、80を過ぎても矍鑠としていて海外の学会に参加される、英語の堪能な先生でした.世界のフクヤマでした.


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